コンサートホール2F客席の有感振動対策
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- 観客上下運動に伴い2階客席で発生した振動障害を制振装置により解決
- コンサート時の観客動作(上下運動)によりホール2階席の可動式張出し部が大きく振動したため、有感振動障害が発生、また建物構造強度に対する影響も懸念された。これより振動対策が検討されることとなり、事前調査の結果に基づき制振装置(TMD:Tuned Mass Damper)を設計・製作し、効果検証まで行った。本事例ではTMDの設計概要と、対策後の効果確認結果について紹介する。
対策フロー
今回の制振対策フロー(事前調査~効果確認)を【図1】に示す。
まず障害状況を把握するために事前調査測定(コンサート時の振動測定)を実施し、客席張出し部先端の最大変位(0-P)が9.7mmであることを確認した。続いて、客席張出し部の構造解析(モード解析)を行った結果、客席満席時の床の固有振動数は1次モード:3.14Hz、2次モード:3.40Hzとなり、曲のリズムによっては共振する周波数帯であることがわかった。
以上の結果と2F張出し部の有効振動質量などの検討諸元を基に最適なTMD仕様、台数、配置を決定し、設計・製作、設置工事を経て最終の効果確認測定(加振実験、及びコンサート時の振動測定)を行った。
図1: 制振対策フロー
対策ポイント
コンサートでは曲のリズムに合わせて観客が上下に跳ねるような動作を行い、それが原因で観客席の振動が発生する。特に鉄骨造の張出し部などでは固有振動数が低く、曲のリズム(観客の上下動作リズム)と同調した場合、共振現象により非常に大きな振動を発生し、問題となるケースが多く見られる。
制振装置TMD概要
TMD本体概略図と仕様を【図2】に、TMD設置場所の概略図を【図3】に示す。
図2:TMD本体概略図と仕様
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図3: TMD設置場所(2階側面図)
制振効果
効果の確認は、1~15人による加振実験と実際のコンサート時の振動測定より行った。
加振実験では、TMD-OFF、ON時に15人がリズムを合わせて足踏みをした時の床振動を測定した。
結果、床の1次固有振動数に合わせて加振した時の最大加速度振幅(0-P)は、TMD-OFF時に298Gal(変位振幅6.0mm)であったのに対し、TMD-ON時は74.9Gal(1.5mm)と、約1/4に大きく低減した【図4】。なお加振実験時はほぼ空席状態のため、この時は空席状態の床固有振動数に合わせてTMDを最適調整し実験を実施していることを補足する。
また実際のコンサート時の測定では(※満席時の床固有振動数に合わせてTMDを最適調整)、TMD-ON状態において最大加速度振幅(0-P)が67.8gal(変位振幅1.6mm)であった【図5】(※事前調査時の最大変位振幅は9.7mm)。これよりTMDによる制振対策が非常に有効であったことが確認された。
図4: 加振実験時(15人加振)の加速度時間波形(TMD-OFF、ON)
図5: 実際のコンサート時の加速度時間波形(TMD-ON)