特許機器株式会社 特許機器株式会社

振動を科学する

常に存在する振動

私たちは「森羅万象、揺らぎの世界」に生きています。量子力学の世界では、エネルギーが最低状態となる絶対零度付近においてさえ、原子の振動は止まることがないと言われています(ゼロ点振動)。
また、振動は自然科学に属するテーマの一つですが、実は社会科学や人文科学とも密接な関係にあります。例えば、政治・経済・社会が発展すれば、それに伴って建築物・居住環境・工業製品も進化し、同時に要求される振動環境もより高度なものになっていくからです。
このように私たちは「振動」が常に身近に存在する中で暮らし、日々の社会活動を営んでいますが、普段意識することはあまりありません。それぞれの場には必要とされる振動環境(静寂さ)があり、その許容限度を超えた時に初めて「振動」を意識するようになるのです。

振動の始まり

では、振動現象はいつから存在するのでしょうか。その起源は宇宙誕生時にまでさかのぼります。
宇宙はインフレーション(膨張)に始まり、ビッグバンによって巨大エネルギーを吐き出し、それによって時間と空間が生み出されました。そしてこの時、ビッグバンのプラズマ状態の中で光子エネルギーが無数の電子と衝突し、エネルギーの一部が物質化された質量粒子へと変換され、揺らぐ量子(素粒子) [=振動の源] が誕生します。
これらの現象は、宇宙の始まりからわずか数分の間に起こったと言われています。その38万年後、宇宙は晴れ上がり、重力による質量集中、銀河・星の形成を経て、138億年後の現在へと続いてきたわけです。

振動工学とは

これまで人類は、自然科学・社会科学・人文科学の3科学(Science)を基礎科学として、便利さを追求する物づくり工学(Engineering)へと展開してきました。さらに、工学の分野は機械工学、電子工学、土木・建設工学など多岐にわたりますが、これら全てに共通する課題の一つが振動工学です。
自然科学が揺らぎから始まるように、振動をゼロにすることはできません。振動工学は「目的や用途に沿って、人や人工的建造物が許容できる量まで振動を小さくする学問であり、技術である」と言えます。

人々への振動・騒音の影響

人々は目的・用途に応じて様々な施設をつくってきました。これらが位置する地表面上では、地下のマグマや地殻の運動による波動が伝わり、脈動や断続的な無感地震動が生じています。また、道路・交通や産業機械、風、波浪などによる振動も、地盤・建物の構造や距離に応じて減衰しながらも伝わっていき、常に微弱な振動のある環境をつくり出しています(常時微動)。

振動制御の対象制御
住宅(戸建て、中低層・高層住宅)
一般建築(庁舎、銀行、ホテル、百貨店、事務所)
学校(保育所、小・中学校、図書館)
病院(病院建築、病室、手術室、検査室)
劇場(映画館、音楽ホール、美術館、博物館)
研究施設(大学・研究機関、研究・開発・実験)
工場(重工業、軽工業、生産・加工・検査)
倉庫(自動倉庫、自動化物流センター)
運動施設(体育館、競技場、ライブ施設)
交通(道路、鉄道、地下鉄、自動車)
船舶(客室、貨物船)
宇宙(衛星打上げ実験場)

施設内には、もともと建物を形成する素材や構造の特性(剛性)によって固有の振動成分が存在しています。さらに、人、機械、流体、磁歪、車両、音圧といった加振源が存在することで様々な振動が発生します。

こうした振動は、時として騒音障害につながります。音は空気などの媒質が振動することによって聞こえますが、建物内で床や壁が大きく振動すると、それが空気を振動させて音となり、加振源とは別の場所で騒音障害が発生します。このように、床や壁、配管などの構造体を伝わった振動に起因して発生する音のことを固体音といいます。

また、ナノテク化が進んだ最先端の研究施設や生産工場では、地盤の常時微動をはるかに下回る無感レベルの振動さえも、装置の精度に影響を及ぼしてしまいます。その振動(変位)の大きさは、人間にとっては識別できないミクロン(10-3mm)〜ナノメートル(10-6mm)の超微小なレベルです。

一方、地震は一つの施設だけでなく、広範囲の地域にわたって大きな振動影響を及ぼします。地球上の地震活動はヒマラヤからアルプスに至る造山帯や環太平洋造山帯において活発ですが、日本も環太平洋造山帯に位置し、震度5〜6クラスの地震が平均して2年に1度、震度7クラスが30年に1度発生しています。構造体の法定耐用年数である60年の間に、幾度となく強い地震が起こっていることになります。

振動障害の最適解を求めて

以上のような様々な振動障害とそのソリューション(最適解)技術について、私たちはこれまで個々の現場で経験を積み重ね、演繹的に学んできました。振動障害は偶然に生じるのではなく、宇宙現象と同じく普遍性と避けられない必然性があります。振動障害が起きる範囲は非常に幅広く、また同じように見える振動障害でも、その要因や背景は現場ごとに異なるといった複雑性があります。

そこで私たちは、個々の現場の障害事例から共通点を探り、障害の種類やその領域区分について帰納的観点から整理し、これをトリパタイト図上に表現することで最適なアプローチを図る手段としました。
トリパタイト図は周波数を横軸として、振動現象を位置(変位)とその時間変化(=速度・加速度)の4次元空間から捉えたものです。人間社会で対象となる地震・体感振動・固体音領域の振動(騒音)、さらに無感振動まで、あらゆる振動の領域が表示されていることがお分かりいただけるでしょう。この振動領域とともに表されるトリパタイト図は、私たち特許機器がこれまでの約50年間に培ってきた知見の集大成であるとも言えます。

この世は、素粒子から始まる「森羅万象、揺らぎ振動の世界」。
特許機器の社会的役割(使命、分担)は、領域ごとの振動制御技術の追求とともに、「各領域を貫いて最適解を得る」特許機器だからこそ可能なソリューション技術の追求にあります。

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振動の世界観や制御技術を紹介した、体験型展示施設

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